シロコの夏休み 2日目・下

シロコの夏休み 2日目・下


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バーガーカイザー

アル「・・・結局いつものとこじゃない」

ジト目になりながらセルフオーダー装置『キオスク』を見つめるアル。

わかってない。バーガーカイザーには各店舗に限定メニューがある。確かここは『パイナップルダブルチーズバーガー』だ。

カヨコ「・・・ふーん。社長。限定メニューとかあるみたいだよ。それに今はコラボ商品もあるみたいだし」

ん、コラボ商品?

私たちはカヨコが指差す所を見た。

セリカ「万魔殿コラボ?!」

まさかの万魔殿コラボという新時代の産物に驚いてしまうセリカ。いつも驚かされたり横転したりツッコミしたり大変そうだ。

万魔殿コラボのページを見る私たち。

どうやら万魔殿5人衆監修らしい。

『イロハのアセロラジュース』

『マコトのケーニヒストリプルチーズバーガー』

『サツキのNKウルトラチリホットドッグ』

『チアキのブラックペッパーシャカポテ』

あれ、珍しくイブキのやつが・・・・

『イブキの超スッパレモンバーガー』

『イブキの黄金律レモネード』

『イブキのプリンシェイク』

『イブキの唐揚げ(レモン付き)』・・・

ん、参りました。

ノノミ「ど、怒涛の勢いのイブキですね・・・」

カヨコ「まぁイブキちゃんはみんなの人気者だしね。みんなも好きでしょ?」

アビドス生徒会「「「「は、はぃ・・・」」」」

カヨコから微妙な圧を感じた。怖い。

何はともあれ、私たちは注文して、席に移動する。

しばらくして頼んだものが運ばれてきた。

食べながら、私たちは交流を進める。

シロコ「・・・アルは、どうやって生き残ったの?」

アル「え、わ私は・・」

ムツキ「アルちゃんったらすごいんだよ!3ヶ月も運送会社でバイトとして働いて、おまけに『ボブ』って名乗って、誰にも悟られずにやり抜いてたし!」

アル「ちょっとムツキ!それ言わないでちょうだい!!」

シロコ「ん、お疲れ様、ボブ」

アル「くぉら!・・うっ辛い!!」

サツキのNKウルトラチリホットドッグは激辛注意と書いてあった。案の定その辛さに悶えるアル。辛い=アウトローで注文した結果だ。

ん、マコトのケーニヒストリプルチーズバーガーこそ至高。高いけど。

ハルカ「あっアル様ぁ!水!水こちらです!!」

コント始めてる3人をよそに、カヨコは私達に質問を投げかけてくる。

カヨコ「・・・最近どう?アビドスは」

シロコ「ん。順調。ゲヘナやレッドウィンターとの肥料事業が成功して借金も返済したし」

カヨコの目が鋭くなる。ただでさえ怖い顔がもっと怖くなった。もしかして半年で借金を完済したのを怪しんでいるのだろうか。それとも何か欲しいのだろうか。

カヨコ「・・・・・」

シロコ「・・・ん、参加したいの?」

しばらく互いの目を見つめる。

カヨコ「・・・はぁ。・・・契約書には気をつけなよ。マコトはよくバックドア用意する癖があるし。ま、完済できたなら損はしてなさそうで良かったよ。」

後でマコトに聞いてみよ、と小さく呟く。

もしかして友達なのだろうか。

ん、つまりカヨコを頼ればもっとゲヘナからお金を貰える。

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その後私達はアル達と別れ、アクアリウムアラバに行くことにした。

色んな海洋生物を拝める。

ん、おいしそう。と言うのは置いておいて、私は真っ先にメインのところに向かった。

水族館は、私が知っているホシノ先輩の思い出の一つだ。

先輩は私達によく、海の生き物について語っていた。

その時の先輩はとても饒舌で、普段の怠惰の塊からは想像ができないほどの熱意があった。

『砂糖』に対する熱意も同じくらいあったが。

私は買ったイヤリングをふと、アクアリウムに照らしてみる。

そうそう、こんな感じの目の光り方だった。

・・・もし、先輩がいたら・・・一緒に行けたのかな・・・・

『うへへ〜たまんないねぇ・・・これぞまさに楽園・・・・・』

シロコ「?!」

私は慌ててイヤリングを箱にしまい、人混みの方を見る。

一瞬だけ、見覚えのあるピンクのアホ毛が見えた気がした。

シロコ「・・・待ってっ!!」

駆け出す。

人を潜り抜け、飛び越え、そのアホ毛を追う。

待ってほしい。話を聞かせて欲しい・・・

やがて再び落ち着くと、そこは行き止まりだった。

シロコ「・・・・はぁ・・・はぁ・・・」

あれは幻覚だった。

間違いなくそうなのだろうけど、それでも・・・。

すると、ノノミ達が追いかけてきた。

ノノミ「どうしたんですか〜?」

セリカ「いきなり走り出したら危ないじゃない!」

はぁ・・・はぁ・・・ 

アヤネ「・・・大丈夫ですか?・・その、汗が・・」

言えなかった。

ホシノ先輩の声が聞こえたなんて、言う気になれなかった。

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あの後私達はホテルに戻り、先ほどのアラバモールで買ったものを広げた。

ノノミ「これと、これと、これと〜」

ブランドもの祭りになっているノノミはさておき、セリカは何を買ったのだろうか。

セリカ「・・・私はこれね。」

エメラルドの腕輪。それも年代もの。

セリカ「・・幸運の石言葉があるらしいわ!」

ん、セリカらしい(ブーメラン)

アヤネ「シロコ先輩は何か買ったんですか?」

シロコ「ん・・・」

イヤリングを取り出す。

予想通り、3人はその色を見て沈黙する。

ホシノ先輩の目の色のイヤリングとか、もうアレなのだ。

ノノミ「・・・懐かしいですねぇ〜」

アヤネ「・・・アクアリウムも、多分ホシノ先輩がいたら・・・」

セリカ「・・・・そうねぇ・・」

何だかしみじみとした雰囲気になってしまった。

そういうつもりじゃなかったんだが。

ちなみに夕飯はワイルドハント自治区伝統の料理だった。

世界三大美食らしいが、とても前衛的な料理で、シュールさを感じた。

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私は大浴場に来ていた。

このホテル、どうやらお湯にも種類があるらしく、それぞれ効能が違うらしい。よくわからないけど。

温泉の入り口にいくと、何やら胸像が二つ、立っていた。

シロコ「・・・温泉開発部・・・」

温泉開発部の部長、鬼怒川カスミと副部長の下倉メグのだ。

何やら胸像の下に文字が書いてある。

この地域における彼女達の温泉開発の功績を讃えるものだ。

すると、後ろから話しかけられた。

イチカ「あっ、お久っす」

イチカだ。

彼女も桶の中にタオルなどを一式持ってきている。

イチカ「・・・風呂っすよね?ご一緒してもいいっすか?」

そう言うと、彼女は あの像の存在に気がつく。

イチカ「・・・へぇ・・・」

シロコ「ん、入ろ」

直感からか、早くここを離れた方がいい気がしたので、彼女の手を引っ張って女湯をくぐった。

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大浴場 露天風呂

イチカ「・・・それにしても、これって温泉開発部のやつなんっすか?」

シロコ「ん、そうらしい。」

イチカははぁとため息をつくと、思い出を語りだす。

イチカ「・・・あの鬼怒川カスミとかいう女には苦しめられたっす。・・・頼んでもないのに、トリニティに来て、頼んでもないのに温泉開発をして、ダメだったら吹き飛ばす。・・・その上自分の立ち位置をしっかりと理解していて、話術で相手をうまく利用することに長けている。昔、今のゲヘナ風紀委員長と私とカスミの三つ巴みたいな戦いがあったんすけど、風紀委員会の方は猪武者だし、私は遺物任務で焦ってたりで、うまく手玉に取られたっす。それでいて今はなんか英雄扱いって。まぁ死んじゃったらみんな英霊ってのはトリニティでもあるんでいいんすけど、なんかムカつくっすよねぇ??」

お酒でも飲んだのか、それともコレが彼女の本性なのか、愚痴をこぼし続ける。

イチカ「それにどうもナギサ様もここに来たみたいじゃないっすか。てっきり体調不良で入院でもしてんのかと思ったら、あの人もあの人でバカンス。今なんてサンクトゥス学園に改名した方がいい状況になってるってのに・・・・・・ハァ〜〜〜〜〜〜」

青筋が見えているし開眼している。

シロコ「ん。関わりのあった人がどうしようもなかった・・ってことはよくある。私もあった。」

イチカ「?」

シロコ「・・・・でも、いつかそういう時間が大切だったと感じる日が来るはず。」

これは私の体験談でもあり、もう1人の私の体験談でもある。

イチカはポカーンとしたが、すぐに笑い出した。

イチカ「・・・あはははっ!そっすか。・・・なんだか実感できないっすね〜」

すると、タイミングがいいのか、何考えているのかわからない顔でぼんやりしていたツルギが立ち上がる。

ツルギ「・・・私は上がるぞ」

イチカ「あ、ちょっと待ってください!今私も上がるっすよ!」

そう言うと風呂から上がり、室内に去って行く。去り際私の方を向いて

イチカ「アドバイス、ありがとうっす」

去って行くイチカの後ろ姿を眺めながら、私はもう少しだけこの星空を眺めることにした。

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用語・概念集

バーガーカイザー:カイザーコーポレーションの構成会社。

万魔殿コラボ:そのままの意味。

イブキのコラボ商品がやたら多い。

やイフね。

カヨコとマコト:留年、銀髪、黒メッシュ、目つきが怖い、猫が大好き。

そういうわけでカヨコは元万魔殿でかつマコトとちょっと仲良しと仮定してお送りしております。あのマコトと仲良くできるカヨコに嫌がられてるヨコチチハミデヤン?知らない子ですね・・・

アル=ボブ説:アルちゃんは終戦から3ヶ月、運送会社でバイトをしながらその日暮らし同然の生活をしていた。おはグエル。

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